文体構築の時間だよ!
大したことは何もない。
さて。
前回の記事で、オチまで、一応は書きました。
今のところこんな風。
涙の別れなんて期待もしてなかった。いきなり置いて行かれたようなものだった。だから、僕はまだ大人になりきれないというのに――何故だか、眼前にその元凶が転がっている。
もうストーリーラインについてはみなさん飽きるほど眺めただろうから貼りませんけど、
この時点ではこう、シメるつもりでいます。
正直、わたしにとってはここからが一番のお楽しみです。
推敲作業、一番楽しいとこです!
ここで記事の②を引用しますね。
(個人的な感覚ですが)
ある程度書き進めるまで推敲は我慢するのがいいと思います。
何故なら、完成した小説だけが小説になるからです。
コツのひとつです。自分が飽きる前に終わらせろ!!
何度も言っていることですが、とにかく走り終わりましょう。
細かい言い回しに凝り始めると際限がないです……そしたら終わらない。
小説を書こうなんて考えるような人間が、そして実際に書いてしまい始めるような人間が、凝り性じゃない訳がない。
完成した物語だけが良い作品だ!
とは一概には言えませんが、
初心者ならとにかく完成を一番の目標にしたほうがいい。
じゃないとねえ、終わらないんですよ。
未完のネタばっかり溜まっていくのは精神衛生に良くないです。
単純に完成させたほうが気分良いですしね。
実のところ、推敲はまったくしてなかった、とは言えない。
何故なら
詰まる→先に飛んで書く→矛盾点や追加点が発生する→戻って訂正するという過程を、それはそれは何度も繰り返していますから、その時々でちょいちょいと直してはいます。
例えばこのくだり。
道すがら、彼は饒舌だった。物静かなやつという印象が勝手にあったから、意外に思う。僕はどうにも腹の中が煮えてたまらず、むっつりと黙っていた。
「声が大きくて困ってしまうんだけど、別に悪気はないんだよ――気のいいひとだよ」
日加里が、しきりと庇うようなことをいうから。まだ収まらない勢いが胸の中で渦を巻いて、あがった飛沫が口を出た。
「だからって」
一瞬、きょとんとこちらを見た日加里青江は眉を下げて笑った。
「どうして、きみがそんなに怒るんだい」
可笑しそうに笑われて、耳が熱くなった。――言われてみたら、そうだ。どうして、僕はこんなに怒っているんだろう。
「きみ、侮辱されたと思わないのかい」
火照りあがった頬が、暴れる心臓の音が、勝手に舌を躍らせる。いつもだったら絶対に言わない言葉が、どんどん喉からあふれ出ていく。
オレンジ色は、最初のツイートに単純につけたしたものです。
青字は、一度全体を書こうとしたものの上手くいかなかった、③で書いたところ、
紫色字が、オチを一回構築してから思いついて、付け足した文章です。
歌仙がむっつりと黙る→青江の言葉に刺激されて本音を言うという流れに整え直して、最後に心理描写を書き足しました。
もうオチまで走りきったからいいんですけど、これをいちいち書きながらでは筆が進む訳はないです……。
うっかりドツボにはまりかけたら、なるべくいじりたい気持ちを我慢して先を進めました。
さて。
完成させたということで、全体の推敲を解禁していきます。
箇条書き状態の文章をざあっと眺めて、
わたしは今回これを
成人したあとの歌仙が、中学の時の忘れがたい体験を回想して愛でている→そしたらその思い出の中心人物がブッ壊しに来た→おこ!っていう感じにしたいな、と思いました。
えーーーとですね……ここから先はわたし個人の好みのはなしになります。
わたし社会人ボーイズラブが好きなんだよねえ。いや学生萌えもあるっちゃあるんですけど、
なんていうか
「今となってはこんな風の彼にも繊細な思春期が!」とか
「思春期を回想してオトナになった気でいるが、テメーまだ青臭えぞ!!」っていう
いい大人(になった気でいるの)が、恥ずかしげもなく恋に落ちる状況ってのにクッソ萌えるという性質でして
だからオチの再会の場面で、
すごい繊細な青春をひっくり返してほしかったんですよね……!!!(すいませんすいません)
というわけで
歌仙が「中学時代に囚われている」描写を追加します。
最初のツイートには無かったパーツです。
でも、これどこに入れたらいいかなあ……と思いつつ。なんとなく書いてみます。
忘れられない中学の同級生がいる。
向こうは公立高校に、僕は私立の高校に進んでしまって、それからとんと会っていないのに、たまに思い返して元気だろうかと考える。
向こうはどうだか知らないけれど、記憶に。
残ったその面影へ触れるたび、僕は思春期に戻ってしまう。
で、ここまで書いたところで正直ちょっと引きましてね。
気持ちの上でも、感覚的にも、作品と距離を取ってみる。
そして思った。
こいつ、エモいぞ……!?いや作者ってのは一番の読者でありつつ、
一番の自分のファンでもあるんで、作文中は興奮状態ですけど
俯瞰してみるのも手ですよ……。
で、コレ。
わたしの脳内で、中の人であるI川K人さんの声で聞こえてしまったんですよね……
「うっわめっちゃ言う、言いそう」って思ってしまった。
自作だから当たり前か。でも言いそうじゃないすか?
あんまりハマってしまったから、
もう
これは文頭に置くしかねえと思いまして、コピペで設置してみました。
そしたらしっくりきちゃった。
しっくり来てしまったから、こんどは全体の端々を書き換えることになります。
現在進行形だった語尾を、過去形に。
つまりこの小説は25歳くらいになる歌仙の回想になるので、25歳が15歳を俯瞰します。
だから
「若いってほんとさぁ……」とでも言いたげな口調を追加します(笑)。
25歳くらいってそういうこと言いたがる年頃かなあって。
比喩表現をなるべくきらびやかなものにしてみたり、
彼は絶対ポエマーだよなあ、と思ったので、
心理描写をなんかものっすごいポエムにしたろうと思っていじくってみたりしました。
例えばこのくだり。
(実はもう完成作はpixivにアップロードしてるんで、そこからコピペしたらフォントが……なんかおもしろいからそのままです)
信じられなかった。
全身の血が、いきなり煮えた。
何が良いんだ。何をそんなに諦めている。
こんなことが、あっていい、そんなわけがあるか。
湧き上がった感情は勢いのままに、僕はうまれて初めての不作法をしくじった。
ここから深く歌仙の思考に潜っていく場面になるので、
(縦書きにしたときに)視線をどんどん下ろして階段状にしてみました。
そして、
微笑むままのくちびるから、言葉がすらすらと空気を滑って、先へ行く。
置いて行かれそうになった僕は、身体が動いた。
違うだろう、彼は──謝るべきじゃない。
謝るべきなのは──僕だ。
このへんからは歌仙が冷静さを取り戻すので、階段を逆にしてみたり。
こんな風に遊んだりしながら、全体を整えていきます。
一人称視点に限りませんが
『この時点でこの人物が知らないことを語っていないか』のチェックはけっこう重要です。
つじつまが合わなくなってしまうから。
逆に、ここを徹底すると、きちんとわかりやすくなると思う。
すると、だんだん文章の「カラー」がついてきます。
これが、世間一般でいうところの『文体』というやつかな~と思います。
最初から文体を設定して書くのは無駄かなあと。
そりゃあ、手馴れた人はもう自分のトーンがあるから、最初からフルスロットルで書けます。
でも、それはね、こつこつと構築していくものであって
最初から持っているものではないです。全体の把握もまだしてない状況から、いきなり恰好をつけようとしても途方にくれるだけです。
実際わたしはそうやって、何度も躓いたんで……
拙くても、箇条書きでも、まず完成させてから文章を整えるのが効率的だったんです。
まず物語を作り上げて、それからおしゃれをさせてあげるといい。
最後は校正します。
一人称(最近は僕、わたし、に厳しい方が増えたので、笑)をチェックしたり。
ひらがなにひらいている個所、漢字に変換している個所でバラバラの単語が無いかとか。
わたしがよくやりがちなのは
『すこし』『やわらかい』『いこう』あたりはひらがなにしたいけど、うっかり漢字にしてたりとか。
そういうのを直します。
もちろん誤字脱字とかも。
ま、pixivはじめとしたSNSでの公開なら、後日いくらでもこっそり訂正ができますが笑
最後に題名を捻りだして完成しました。コチラ。(校正ミスあったら教えてください……)
「ここで会ったが十年目」/「樹成あや」の小説 [pixiv] 完成させたときの気持ちよさったらないです。
いわゆる「脱稿ハイ」ってやつ!
同人活動をする方がよく言っておられます、アレ。
オン専も味わえますよ!笑
御用とお急ぎでない方はどうぞ、ご覧になってくださいませ。
「なーんだ、こんなもんで小説って言えるのかあ」
「これくらいで出来たってデカい顔できるなら書いてみようかなあ」
そう、思っていただけたら幸いです。
原案をご提供いただきましたとりにくさん、楽しい時間をありがとうございました!
題名については改めて後日やりたいテーマなので、また。
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